■基調報告
『阪神・淡路大震災以降の防災教育を振り返り、次の方向性を考える~2004年に始まった3つの防災教育の試みの20年~』をテーマに3名の方にご報告いただきました。
石井 布紀子様(NPO法人さくらネット 代表理事)より 1.17未来賞ぼうさい甲子園について
『ぼうさい甲子園は平成17年からスタートして今年で18回目となります。阪神で淡路大震災の経験と教訓を裏に未来に向かって継承していくために学校を中心とした取り組みを表彰するというところで続いています。年に約130から150団体の応募がありますが、小、中、高、大学、特別支援学校、それぞれの中から30団体ぐらいの受賞団体を出して参加を促進しています。受賞校から見える防災学習の成果として、災害発生時に命を守る力になった、ということが見えています。東日本大震災の時は、前年に受賞した学校が釜石東中学校だったこともあり、自主交流会などで子どもたち同士も色々な方法でつながっていたため、安否確認の報告なども事務局に寄せられて、その時どのように命を守ったのかということが強く伝わってくる素晴らしい機会となりました。特別支援学校の部門を新設し、多くの応募をいただいているところですが、1回きりしか出さない学校が圧倒的に多いのがこの事業の状況で、常連校は10回以上出してくださる学校もある一方で、ほとんどの学校は最初に出した時に賞が取れなかったら諦めてしまう傾向があります。もっと交流や様々な方法で応援を受け、教職員も子どもたちも主体的に取り組めるような環境ができれば良いのではないかと思っております。』
とお話をいただきました。
杓子尾 駿様(日本損害保険協会 業務企画部 防災・安全グループ 係長)より ぼうさい探検隊マップコンクールについて
『我々日本損害保険協会は、小学生向けということでぼうさい探検隊を行っております。街中探検をして地域の方へのインタビューを通じ、防災、防犯、交通安全に関する施設や設備を発見したら写真を撮ってマップを作成し、発表していただいております。2022年度で19回目ですが、これまで約3万1000作品の応募があって、携わった児童数は約21万2000人にものぼるところです。ぼうさい探検隊の目的の大事な点は二つありまして、楽しみながら学んで自分たちの力で気づくということ、もう一つは地域に愛着を持っていただくことです。マップ作りを通じて子供たちが危険箇所として指摘した部分が自治体の耳に入り、実際にハードが改善されたという事例もございます。また、直近の変化している部分として、2019年度からタブレットを使って取り組めるようになっております。コロナウイルスの影響で、2020年度21年度は参加者がガクッと減っています。そんな中、応募内訳の多くにタブレットの作品が多く占めていました。タブレットが無かったらもっと減っていたのではと思います。変化し続けてきたからこそ、こうした有事のときでも対応できたのではないか、変化することはとても大事なことではないかと思います。』
とお話をいただきました。
木村 玲欧様(兵庫県立大学環境人間学部・大学院環境人間学研究科 教授)より 防災教育チャレンジプランについて
『防災教育チャレンジプランは、内閣府などのサポートの元に、2004年から20年近くやっています。防災教育の専門家有志で実施し、学校や地域などのべ330団体ぐらいを支援しています。中間報告や最終報告などいくつかの報告の場でチャレンジしている他団体と意見交流をしたり、親身になってくれる実行委員がいたりと、アドバイスを受けながら最後に成果を発表していただくというのが特徴になります。また、全ての団体へサポーター認定証をお渡ししています。次年度も新しいチャレンジが出てきますので、防災教育をチャレンジしたい人たちの場を作ってその活動の場を広げていこうというのも特徴です。
これまでの実践団体の調査分析ですが、災害が起こるとその災害の周りの地域でもどんどんチャレンジしていただいているという状況です。北海道、東北では地震や津波災害、中国、四国、九州では水害や土砂災害、関東、中部、関西では災害全般をターゲットとしているチャレンジが多くなっています。チャレンジプランで様々な地域の人たちが様々な自分たちの災害や地域特性に特化したプログラムをチャレンジしようとしていて、自分のプランをより広げていく交流の場というのは有用性があるのではないかと思っております。』
とお話をいただきました。
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